ピンク色に塗られた校倉造(あぜくらづくり)オフィスビル街、
嘆きの底なし沼海がめ甲羅上、
決して当らないので少し参考になる神託の炭酸水泉、
いろんな行き先の窓口があったのですが。
その駅には付属建物が沢山あって入り組んでいます。
どこの窓口に並んでも何度でも「願い事妖精国行き」の切符売り場に回されてしまうので、しかたなくその切符にしました。
子供専用の窓口があって、そこに並べる子供にお使いを頼めれば、早く買えるようでした。
「早さはいいの。行き先なの」
「蕾アップリケもよく似合う。ポケットがたくさんあって助かったし」白群(びゃくぐん)のジーンズのポケットに詰めようとすると、布が硬くてパキパキンと折れてしまったのでした。
「あの貫禄は、今どんなに頑張っても出せないわね。年季が入用よ。もっと大きくなったらああいうお婆さんになる」
シアーでない濃い色の口紅は大人の女性にしか扱えない武器です。
「決まっているってああいうのをいうんだわ。このエプロンドレスもいいけど、もっとバッチリおしゃれした日に落ちてくるんだった」
綿帽子はとくにあの口紅が素敵だと思いました。綿帽子には、まだあれは無理でした。
「でも、ワセリンを塗っただけのピンクの唇は、色が気分で変化するよ」
いろんな肌の色と色んな服を着た人がいるので、綿帽子もウイスタリアも、じろじろ見られたりはしませんでした。
綿帽子の方は、ビビッドイエローのジャケットと白いミニスカートをはいて、白い大きなつばの帽子、黄色いハイヒール、レモンオレンジ色クラッチバッグの、オレンジよりの赤のルージュをくっきりと塗った、フランス人みたいなお洒落なお婆さんから目が離せません。
ドレスエプロンの蕾型アップリケのポケットから、ふた握りも突き出している、さっき折ったガラスの小枝が、乗る時に使えるのが身振り手振りでわかりました。
「全部食べちゃわなくてよかった」と綿帽子。
「お土産にしようと思ったからね」と竜胆色(りんどういろ)。
「お土産にも少しは残るかしら」
「これでお土産を買いすぎなければ」
馬車と牛車と車が道を走っています。綿帽子はあの牛車を見ると、「とにかく『早くしなくちゃ』と思ってたのがわかる」と思いました。「何をってわけじゃないけど」
「例えばさっきは、落ちながらパリパリ折り取ってくるので忙しかったよね」
馬車が乗合バスのようです。「乗合馬車っていうんだよ」とクロッカスがいいます。「あの人は御者」