「何もないって駅に苦情が来そうだもの」
「ネズミ返しまでピンクだ」
「塗られてるんじゃなくって、木がピンクよ。よく見ると綺麗。珊瑚みたいに。これ粉砕しないで使えないのかしら。アクセサリーの材料とか」
「そういえばどうしてわざわざ壊すんだろう」
「珊瑚色廃墟って名前をつけかえたら名所になるのに」
綿帽子とパンジーは急に目の前がピンク色になったので驚きました。ピンク色の校倉造街に来ていたのでした。
「あのボールを垂らした車で壊してるとこね。剣玉付働く車」
「ここはたしかに切符売りたくないかもね」
「何度我慢しても無駄だって思わないの」と綿帽子。
「まあ大変なことよね」と貝殻姉。
「ひとつ位どうしても追求したいことがあってもいいんじゃない」と白巻貝。
「同じ人は同じことを願いつづけるのよ」
『そういうわけで、お喋りするとか、遊ぶとか、そういうしばらく一緒にいる必要のある願い事を聞く妖精は少なくなりました。最後まで持ち堪えてそれをしていたのが仏で、それでもやっぱり仏の顔は三度までなのでした。彼は、三度しか我慢できないのでは足りないというので今兜率天だったかどこかで修行中です』
「『ダメじゃないよ。普通だよ』っていうと『ダメなままにしようとしてる』っていうし、なかなか言葉が通じなくてさ」と白巻貝。
「どういう状態でも、本人以外は気にしないわよね」と綿帽子。
「うん。だから当然『今のままでいいか』には『応 Oui』の返事になる。『これじゃダメだよね?』は反語でやっぱり『これでいいよね』って意味だから『そんなことないよ』」
「特別な人ってヒットラーとかアレキサンダー大王のことでしょ。ちょっとした違い、はみんなにあるもの」と綿帽子。
「近づいても、他の人と見分けられないくらい違いのない人って、いたらびっくりするね、きっと」と白巻貝。
『オレもきちがい、あんたもきちがい』
「際限なく『自分はこれでいいよね? ダメだけどそこが可愛いよね?』にYESと応えることと、『中身を見て好きになれ』という願いはなぜかセット」と白巻貝。
「複数回いう場合の『ダメ』はたんにニンゲンの平均値ね。たしかに『ダメじゃない』っていうか、普通、無特徴。平均化した特徴のない、誰にでも似ている顔が美人なのよ」