その種は地面を突き破って伸びていきました。ガラスのような透明の根は中が空洞で、降りていけるのです。ななめに伸びた根をつるつるすべって行きます。
水脈の中を突っ切ったところではしばらくしがみついて、流れを眺めていました。
光が届かないからきらめくはずがないですって? そんなお利口さんはこんな話をほんとうにしないのです。
「水族館で、お魚が水槽の外を見たらこんなかしら」と綿帽子。
「水槽の外には水は見えないと思うよ」と薄縹(うすはなだ)。
「ならこれは、水族館のお魚抜きね」
「もしかしたら彼らの目には空気が見えるのかもしれない」
硝子の洗濯バサミは開発中でした。落としても割れなくて、軽くするため中をくりぬいた形に。それにドワーフ達は見た目が良いものでなければ、自分達が作る意味がないと考えていました。だから、思い切り丹精したものしか出来上がらないのです。
今回は、ドワーフの蟻のような住家から、綿帽子のお家に行くための、硝子の種も、包みに紛れ込んでいました。
「これは小さくてハンカチしか干せないけど」と言いながら、傘を差した女の子の後姿と、雨のしずくの刺繍のハンカチを干します。
「ほら、これなんかチョコレートとミントのマーブルカラー」
姉さまがお洗濯をすると、どんなにからりとした晴れでも連日でも、干し終わった途端必ず雨が降るのです。今日はキツネの嫁入りです。
「そして外ではさっぱり思い出さないのよ。だからずっと足りない上に減少傾向でね」
匠(たくみ)の妖精さんがいつのまにか置いていってくれた洗濯バサミです。
「クローバー型とか蛙型とかマトリョーシカ型とか星型とか作ってくれるのね」
綿帽子は紺色に白の水玉とパイピングのワンピースを着た子が一番気に入りました。
一回の洗濯物に足りる洗濯バサミがあるのはうれしいことです。
「こんなにうれしいのは今のうちだけだろうからこまめにお洗濯するの」と姉さまはいいます。こないだまでは「洗濯バサミが足りないからこまめに少ない量でお洗濯する」といっていたのでした。
「干すたびに1、2個パリンと砕けていっていてね」青地に紺、白、黄色のプリムラと、緑の濃淡の葉の花柄のワンピースを干しながら姉さま。
「プラスチックが紫外線で劣化したのね」と綿帽子。
「ウィルスは人為的に蒔くのよね。ワクチンとセットで」
「それはコンピューター限定です。ウイルスはものすごいスピードで分裂するので、突然変異だけで環境変化や敵に対処できるそうです。ひとりで増えていくんです」
「他人と協力して、人為で遺伝子を掛け合わす必要がない」
「人為を加えずに勝手に変化増殖しなければウイルスと呼べません」
「暑くなったらその環境に合ったウイルスが発生するのね」
「その環境にあった動物も、生殖で発生するよ。どっちも全滅とかしない」
「良くなるだろうね」
「良くなってもらわないとな」
「氷河期の反対の熱帯期を作る頃合だもんね」
「そう、海を広げて、高くて天国に近いところ、今森になってるとこまで動物を押し上げる」
「どこでも熱帯楽園フルーツが実るね」
「新しい種類の動物も育つ」