その種は地面を突き破って伸びていきました。ガラスのような透明の根は中が空洞で、降りていけるのです。ななめに伸びた根をつるつるすべって行きます。
水脈の中を突っ切ったところではしばらくしがみついて、流れを眺めていました。
光が届かないからきらめくはずがないですって? そんなお利口さんはこんな話をほんとうにしないのです。
「水族館で、お魚が水槽の外を見たらこんなかしら」と綿帽子。
「水槽の外には水は見えないと思うよ」と薄縹(うすはなだ)。
「ならこれは、水族館のお魚抜きね」
「もしかしたら彼らの目には空気が見えるのかもしれない」