薄緑の熊が出てきました。
「『お嬢さん、お逃げなさい』っていうかしら。白い貝殻のではないけど、白いパールのイヤリングをしているから。でもちょうどよく落ちるかしら」と綿帽子はわくわくしながら見つめました。
「この熊に乗るといいです。たぶん、乗せてくれるでしょう」と淡藤色(あわふじいろ)がいいます。
すると熊はにっこりしました。すくなくとも綿帽子にはそう見えました。
「いい熊みたいだけど、どこに行っちゃうかわからないじゃない」
「たぶん彼が地球行き宇宙号です。陸(おか)住まいだから、大西洋の真ん中に降りたりはしないでしょう」