魂は蝶や鳥の形で飛んでいくのです。
それを見ることができるのは、たまたまそれが通りかかったときに目に睫毛が入っていて、それに気づいていないひとです。
「戦場では治療は軽症者にしかされないって本当?」
「もちろんです。死んでも死ななくても同様の不様が次々補充されますから」
「人道主義の戦争では、連れて逃げる必要分、殺すより負傷させた方が有利だそうですね」と薄縹(うすはなだ)。
「ヒューマニズムですね」
「この林を通っていけば静かです。音の結界が、張ってあるんです。三派それぞれ五月蝿いですから」
「巴戦なんですか」とサルビアブルー。
「いいえ、一派は日和見蝙蝠です」
「お嬢さん、どうぞこちらへ」と、林の中から見た事のある人が言います。
「あなたは戦争ごっこの興行主でしたね」と。
「破壊されたい天爵千の遊びなんですよ。それ以外の人には矢は当らないのです」
野原では戦をしているようでした。喇叭の音が聞こえ、バラバラと弓が飛び交っています。流れ矢が飛んできて綿帽子に当ったかと思うと桜の枝になって花弁が散っているのでした。