もっと上まで続いていそうですが、ノースリーブオレンジ色チャイナ服の下に、裾広がりドレープたっぷりの真っ白い長袖を着ているのでその上は見えません。
「合言葉というわけではないのですよ」
「間違ったとしたら真っ二つだったかもしれない」と竜胆色(りんどういろ)が囁いていると、手首から指先に蔦の巻きつく唐草模様の刺青をした人が出てきました。
兵士は青龍刀をヒヤシンスに向けたまま、革の扉を少し開け、顎で入れと言っています。
「あれが合言葉なら、海とでも応えればよかった」と、入って幕がぐわりと閉まった後に綿帽子は耳打ちしました。
その先には竹林が続いていました。
「パンダはこれを食べるなんて、口の中が切れそうね」と綿帽子は思います。
フワフワの白いミトンとモヘアのスパッツをはいているので、笹に引っかかっても平気です。
林は白樺の林でした。
音の結界は川のせせらぎの音のためにあるようでした。
「切り目をつけて一晩待つと甘い樹液が凍り付いていますよ。ロシアの捕虜だったときに、ロシア兵が教えてくれたのです」