「異性の形になって彼女か彼氏になれって願いも多いし」と白巻貝。
「誰でもいい人とつきあいたくないわ」と貝殻姉。
「飯食わぬ嫁とかは、『それを願うと一つ目から呪われる』って話ですね」とオーキッドグレイ。
「たまたま恋をする話はあるわね」と綿帽子。
「それでも食い下がってくる人はいなかったの」
『いました。そういう人は呪い殺すしかないのでした』
「殺しちゃうの!」
『際限なく願いがかなってはならないのです。最後にはその人以外のいきとしいけるものは死に絶えます』
『ニンゲンたちはやっぱり、相手が妖精と思い込めば願い事をしていました。その頃はみんな数がたくさん数えられなくて、1、2、3、いっぱいで彼らの数はお終いでした。そしてカウントしないと際限なく願うので、3つまでって言うことにしたのです』
「そういえば仏の顔も三度までと願い事3回って関係あるの」と白巻貝が姉に聞きます。
『古(いにしえ)、まだ妖精とニンゲンがはっきり分かれていなかった時のことです』といきなり貝殻姉は語り部モードです。
「おいしい。作りたてね」
そうなのです。胡瓜やトマトのサンドイッチは作りたてでないと水が出てしまうのですが、パリパリサクサクふかふかなのでした。
「願い事妖精さんは不思議にも思わないみたいだけど」と綿帽子は思いました。「サモワールだってどうやって出してるのか疑問よね」
ポンとなって白巻貝と貝殻姉が出てきたとき、綿帽子は4杯目のお茶を飲んでいました。もうおなかがが洪水です。
「こんにちは」と貝殻姉。
「こんにちは」と綿帽子。
「素敵なアップリケね」
「姉さまが作ったの」
「それにあんた帽子はどうしたの」
「すぐ戻って来る証拠に置いて来た」
「じゃないと解放してくれないんだ。ニンゲンだもの」
「いや、そんななら連れてかないって」というと白巻貝は姉の帽子を持って来てかぶせました。白い円錐形の貝殻型でとんがりのてっぺんから下に細いすじが通っています。