「バラ線巻いて平気だなんて鉄の心臓だな」
「鱗粉ほどに小さいから刺さらない」
「鋼鉄のハートじゃなかったの」
「毛の生えた心臓ってそれのことか」
川岸ではハートの兵士たちがハートの洗濯です。
「鉄条網で守られたハートを盗みに行くのはちょっと」
「心が小さいそうだから盗んでも楽しくないよ」
永遠に誰も欲しがらない物を守る。
「『自分だけは特別で一番』と『他の人も自分も見分けられない、メガネメガネ』は似て見えるのか」
そんな目で見たらどこもかしこもワンダーランド(驚きの国)です。
「大分乱視入ってますね、コンタクトでの乱視矯正はまだまだなんです。瞳の上の水分の中でぐるぐる回ってしまうので」
大きな鏡も流れてきます。中に人が映っていて、
「いいえ、悪魔です。悪魔が自分の真贋、つまりアイデンティティを気にするとも思えませんが」
「戸籍科が頑張ってくれなかったわけだ」
「調律が大変なんだよね」とピアノの中の家ごと流れてきた白鼠の一家が言っています。壁に向かって喋るのはピアノではできません。一台でオーケストラと張れる音量だから。
「好きな人には合わせたいだろ」
「好きな人がいたらね」
「雨雲じゃなくて紅茶の河だろ」
何の作戦を立てているのかはわからないままでした。でも仲良しではあったようです。板の家のテーブルでしょうか。でも他の家でも藁のテーブルや、煉瓦のテーブルを使っていたようにも思えません。